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ジュビラント序曲

更新日:5月16日

A Jubilant Overture A. リード Alfred Reed  (1921-2005)


-Introduction-

特にわけもなく、元気のでないとき。

音楽の楽しさすらも遠く感じられ、「特に聴きたい曲なんてないなあ」 などと暗黒面に陥ってしまったとき。 - 私はこの 「ジュビラント序曲」 (演奏:瑞穂青少年吹奏楽団[1976]) を聴いて、自分の心をリブートしている。


■楽曲概説

                   アルフレッド・リードcond.マイアミ大学ウインドアンサンブル(1980年)


「春の猟犬」 「パンチネロ」 とともにアルフレッド・リードの3大序曲というべき名作。

1969年の作曲で、リードの作品としては初期のものにあたる。 ”Jubilant” は ”歓喜” を意味する。思わず歓声をあげ、或いはそのうれしさに酔ってしまうような、爆発的な喜びを指す言葉とされる。曲想は冒頭からして、まさにそのイメージ通りの音楽である。

元々、リードは 「春」 という季節の華やいだ喜びをイメージし 「 A Springtime Overture (春の序曲)」という題名を付していたが、出版にあたりバーンハウス社社長から季節を限定しない題名を勧められ、現在の「ジュビラント序曲」とした経緯にある。


この曲から感じる ”瑞々しさ” は随一であり、とにかく若々しい活力に満ち溢れている。

季節としての春より更に大きな、青春という人生における季節をそのままそっくり切り出して音楽にした- そうした一心に駆け抜ける爽やかさ、ストレートさが何より最大の魅力であろう。


 【参考・出典】 「アルフレッド・リードの世界[改訂版]」 村上 泰裕 著 (スタイルノート)


■楽曲解説

急-緩-急のオーソドックスな序曲形式の中に、素敵な旋律と輝かしく豊かなサウンド、爽快感とロマンティックさが散りばめられている。


Snare Drum の鮮やかなリムショットの一撃に導かれて、華々しく豊潤なサウンドが充満して幕を開け、これぞ ”Allegro con brio”という音楽が流れ出す。


そして金管中低音による生命力溢れるモチーフ提示に続いて、キラキラと輝くClarinet が旋律を歌いだすのだ。







活力にあふれた伴奏に乗って奏されるこの旋律のスピード感や推進力は、聴くものの心を弾ませて已まない。


旋律の展開をつなぐ金管群のモチーフ応答は実に輝かしい色彩を放ち、まさに ”鮮烈”な印象を与えている。Trombone による ”原色” のハーモニーは極めて快感である。


モチーフが反復されて高揚したその頂点で、中低音の強烈なサウンドが轟いてブレイク!それはそれは胸のすく爽快感だ。

かと思うとカップミュートを着けた Trumpet +Trombone がパステルカラーの楽句を描くなど変幻自在、これが中間部へのブリッジへと導いていく。


中間部 Molto moderato e espressivo ではミュートを外した Trombone の伴奏による導入からして、実に暖かいサウンドが聴かれる。ファンタジックでもあり、ロマンティックでもあるこの音楽から得られるイメージは、スィートな ”優しさ” だ。


やがて木管群に抒情をきわめた旋律がやってくる-。

なんという美しく、エモーショナルな旋律なのだろう…!

そして徐々に高揚していくこの旋律を柔らかに後押しする Timpani のロールが、そして包み込むようなベースラインによる応答が、決定的な感動を与えるのだ。


静まって中間部冒頭の旋律が戻り、ぼんやりと滲むような音楽の余韻の中で木管のソロがこだまして遠く遠く消えていくと、突如として凛然と快速なテンポが戻る。

遠くから迫ってくるスピード感は遂に炸裂して再現部、まるで花火の如き壮麗さである。


一旦静まって軽やかな木管アンサンブルとなり、ここで現れる Fagotto の対旋律が洵に味わい深い。リードの音色配置の巧みさには舌を巻くばかりだ。


あとは一気呵成の終結部。前半にも現れたブレイクのあと、高音の楽句を中低音が追いかけほどなく一体となる全曲のクライマックスヘと突入する。


Snare Drum のリムショットで鞭の入った音楽は、いよいよ鮮烈に。その興奮を高め緩むことなく、再びリムショットの一撃が入り最後の最後までスピードとエネルギーを漲らせ駆け抜けてゆく。


曲中、都合3度のSnare Drum によるリムショットはこの曲に鮮烈な印象と個性を与えており、まさに聴き所となっている。


■推奨音源

この曲の演奏には醒めた落着きではなく、 ”熱気” が欲しい。はち切れんばかりの若きエネルギーが感じさせてほしいのだ。

これを具現化した名演が、1976年度全日本吹奏楽コンクールでの

牟田 久壽cond.

瑞穂青少年吹奏楽団

の演奏なのである。

理想的なテンポ設定と色彩感とコントラストが見事な、”若々しい” 演奏で、この曲にとって一番大切なものを確りと捉えた快演となっている。

私はこれを超える「ジュビラント序曲」の演奏に未だ出会っていない。






サウンドの輝きとダイナミックな溌剌さ、そしてハートのある歌…

まさに ”Jubilant” であり、BRAVO!の歓声を贈りたい。


尚、作曲者リードの指揮による演奏もある。

アルフレッド・リードcond.

東京佼成ウインドオーケストラ


こちらは重厚なサウンドで骨太な演奏、やや ”大人” な「ジュビラント序曲」だ。









【他の所有音源】

 エドワード・ピーターセンcond. ワシントン・ウインズ

 木村 吉宏cond. 広島ウインドオーケストラ


-Epilogue-

「パンチネロ」はノスタルジックで甘美な ”過去”、「春の猟犬」 は今、間違いなくそこにある ”現在” の喜び。そして…「ジュビラント」は一心に見つめる ”未来”

未来を信じ前だけを見て駆け出す若々しさを一枚の写真にした- そんな世界が 「ジュビラント序曲」 にはあるのである。      <Originally Issued on 2008.11.1. / Revised on 2011.2.27. / Further Revised on 2024.1.16.>


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