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フラッシング・ウインズ

hassey-ikka8

更新日:2024年5月17日

Flashing Winds  J. ヴァン=デル=ロースト  Jan Van der Roost (1956-  )


-Introduction-

おそらく本邦吹奏楽界でも、演奏会のオープニング曲として最も採り上げられることの多い楽曲の一つである。絢爛豪壮な序奏部から爽快に開けたのちは、ひたすら駆け抜けていくその疾走感がたまらない-人気があるのも頷ける傑作である。


■楽曲概説

この フラッシング・ウインズ (1988年) は、精力的に創作活動を続けるヤン・ヴァン=デル=ローストの作品の中で最も簡潔なものだが、「プスタ」 「カンタベリー・コラール」 「アルセナール」 と並びさまざまなバンドに広く愛奏されている。

標題は ”きらめく風” と ”きらめく管楽器” とを掛けたものであろう。

ヴァン=デル=ローストは「スパルタクス」 「モンタニャールの詩」 「いにしえの時から」「オスティナーティ」といったスケールが大きくエネルギッシュな作風でも知られるが、規模は違えど「フラッシング・ウインズ」にはそれらとも共通する輝きが随所に現れる。

そして何より、緩徐部分を挟むことなく全体を通じ ”一気に駆け抜ける” 感覚が、オープニング曲として抜群の魅力を放っている。


■楽曲解説

冒頭からして Maestoso (♩=80)、Timpani の豪快で荘厳なソロに重厚なベースラインがカウンターで入るという、実に思い切りがよくダイナミックな音楽である。

Timpani は優れた音色と楽句全体を見透したフレージングでの演奏が求められるし、一方ベースラインは逞しくありつつも、ゆめゆめ ”生音” をぶっ放すようなことなどなく、良い音色と響きの演奏が求められよう。

 

続いて金管群の重厚なファンファーレだ現れるが、アクセントとなっている附点のリズムが特徴的である。

これを生かしつつ大きなフレーズと幅広いサウンドで主部に向うのだが、Trumpet とTrombone が応答しながら1拍ごとに輝きを増し、高揚するさまが大きな感動を誘う。

その張り切った厚い音の束の頂点で弾けるように視界が開け、Allegro energico (♩=160) の主部に入る。

 

主部 3/4拍子は躍動的なバッキングを従えた Trumpet の颯爽とした旋律に始まる。


これを変拍子を交えたリズミックな木管が受けるのだが、この木管のフレーズにはリズミックさだけでなく、同時にふくよかな響きも求められていることがテヌート・スタッカートの付された音符に表れていよう。


主部の繰返しの後、更に流麗な 5/4拍子の中間部。

快速なテンポをそのままに、この抒情的な旋律を涼やかに歌う-本楽曲の真骨頂である。ここをセンチメンタルにダレたテンポで歌っては台無しだ。またリピート時に加わるバッキング・リズムも、極めてタイトな演奏でないと逆効果となる。


中間部を終えるとダル・セーニョし主部に戻るが、ここを繋ぐ木管のトリルが煌いて始まるブリッジがとても素敵!あたかも輝きを増していく朝陽のような鮮やかさがとても印象的なのである。

 

主部の再現を終えると ”躊躇なく” コーダへ。

冒頭のファンファーレが幅広く奏されてクロスオーバーしエネルギーを発散、スピード感とエキサイティングさを一層高めつつ 6/8のビートでアクセントを付し、終末へと一気に吹き抜けていく。


このエンディングではスピードと曲勢を一切緩めることなく、”駆け抜ける” ことこそが肝要なのであって、「最後の小節でテンポを落とす」などという、ありがちでベタな演出は「厳禁」である。

 

■推奨音源

ヤン・ヴァン=デル=ローストcond. 東京佼成ウインドオーケストラ

指揮する演奏にも定評のあるヴァン=デル=ロースト自作自演盤、楽曲の持つ美点を的確に表現している。

明晰な発奏、並びに一つの楽曲としてクッキリまとまっているところも評価できる。

 

 

 

 

  

【その他の所有音源】

 ヤン・ヴァン=デル=ローストcond. 大阪市音楽団(Live)

 汐澤 安彦cond. シエナウインドオーケストラ

 ロバート・グロブcond. アーラウ初年兵音楽隊

 ピエール・キュエイペルスcond. オランダ陸軍軍楽隊

 アンドレ・グランホcond. トロヴィスカル・ユニオン・フィルハーモニー吹奏楽団

 指揮者不詳/コブレンツ・ドイツ陸軍バンド300 

 中川 重則cond. なにわオーケストラル・ウインズ (Live)

 

-Epilogue-

演奏面では、冒頭のファンファーレでアウフタクトが乖離すること無く、重厚でパワフルなサウンドの大きなフレーズで奏されること、そしてそのエネルギーが高まった頂点で快速な主部へと間髪入れずに弾け出すイメージがほしい。

そして主部に入って以降は決してスピード感を途切れさせることなく、全曲を通じて ”一陣の風” が吹き抜けたような、”一気呵成” を感じさせてほしい。

その一方で旋律はより大きなフレーズで捉え、歌心と豊かなスケール感が発揮された演奏が望まれる。

そうした観点から録音もまだまだ「決定盤」が待たれるところである。

 


     <Originally Issued on 2013.8.15. / Revised on 2022.12.28. / Further Revised on 2023.12.1.>


 
 
 

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