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ブロックM

  • hassey-ikka8
  • 2023年11月12日
  • 読了時間: 6分

Block M - Concert March       J.H.ビリク Jerry Harman Bilik  (1933- )


-Introduction-

この現代感覚溢れるマーチが作曲されたのは、何と1955年

マーチ王スーザの没した翌年(1933年)生まれの作曲者ビリクは当時まだミシガン大学の学生で弱冠22才…スーザと比しても確固たるアイデンティティを持つ作品を求めた若者のエネルギーがこの曲を生み出したのだろうか-。


登場から優に半世紀を超える年月が経過したが、この「ブロックM」に匹敵する魅力を持つモダンなマーチは現時点でいったい幾つあるだろうか?斬新なアイディアが次々に現れて、ワクワクさせられっぱなしなのは本当に凄い!

理屈抜きに元気な気分にしてくれるこの曲は、まさにマーチ王スーザが目指したものを体現したとも云えるだろう。


■作曲者および楽曲概説

「ブロックM」 こそはジェリー・ビリクが作曲した、アメリカン・マーチ最高傑作の一つである。


ビリクはミシガン大学シンフォニーバンドのソロ・トロンボーン奏者から作編曲へ活躍を広げていった人物である。 バルトークにも師事したというビリクは、アメリカの人気TVシリーズ ”刑事スタスキー&ハッチ” や ”チャーリーズ・エンジェル” に楽曲アレンジャーとして参画したほか、ディズニーキャラクターによるアイス・ショウ ( Desney on Ice ) の音楽についてもアレンジを担当していることで名高い。


吹奏楽においても、「アメリカ南北戦争幻想曲」「吹奏楽のための交響曲」「アルトサクソフォーン小協奏曲」「トランペット協奏曲」といった堂々たる作品を残しているビリクだが、この「ブロックM」一曲だけでも永遠なる賞賛を手に入れたと言って良い。

  【出典】作曲者HP https://jerrybilikmusic.com/


「ブロックM」はビリクの母校であるミシガン大学のナイト・コンサートのために書かれた作品であり、この ”M” とはミシガン大学のエンブレムにもなっている頭文字を意味している。

アメリカン・フットボールのハーフタイム・ショウにて、ミシガン大学のマーチングバンドが描く人文字…それこそが ”Block M” なのである。



モダンな旋律とハーモニー、洒落たコード進行がこのマーチの魅力である。ポップスのフレーバーを取り入れたマーチは少なくないがここまで洗練されたものはなく他の追随を許さない出来映えである。(というより、後に生まれたポップスのフレーバーのマーチはこの曲にインスパイアされたものも多いはずだ。)

特に、次々と繰り出される優れた旋律の魅力には強く惹きつけられてしまう。

ミシガン大学マーチングバンドによる ”BILIK” の人文字
ミシガン大学マーチングバンドによる ”BILIK” の人文字

■楽曲解説

2/2拍子 ♩=152 の輝かしく溌溂とした序奏でスタート。

高音と低音のダイナミックな応答には躍動感が充満しており、もう初手からぐっと惹きつけられてしまうのだ。

 

その勢いとスピードに乗って、ハーモナイズされた旋律と、これに同時進行する対旋律(オブリガート)が現れる。


モダンさを感じさせるコード進行とリズミックで愛らしい旋律が非常に個性的で思わずハッとさせられる。


全くもって「新しい」!

バックを務める打楽器も大変気が利いていて小粋…それが加わることで旧来のマーチの世界を超えてポップスのフィーリングを注入した新機軸が感じられる。

 

最初 mf、リピートして p というダイナミクスの明確な変化もさることながら、途中にもニュアンスに満ちた抑揚を挟んでいるのが実に心憎い。

…しかしつくづく、この洒落たムードの素敵さときたらいったい何なのだろうか !!

 

その第一旋律が p ヘダイナミクスを変えて繰り返されたのち、急激なクレシェンドとともに今度は雄々しい第二旋律が現れてダイナミックな曲想となる。その対比がまた心を躍らせるのだ。


エキサイティングに第二旋律を締めくくると、すぅっと鎮まってTRIOに入る。

そして、ここからこの曲は一層輝きを増す。お洒落さを極めた旋律が、もういたく心をくすぐるのだ。


伴奏の素敵さもまさに「突抜けて」いる!

Brushes で奏される Snare Drum は旋律よりも逆にこちらがスポットライトを浴びても良いくらいにカッコいいし、リピートした2回目から Cup Mute をつけた Trumpet/Cornet のソリが加わってくると、もはやその素敵さに耐えられず鳥肌が立ちまくってしまう。


短く鮮烈な打楽器ソリでエキサイティングな曲想に転換しブレイク。

これが徐々に高揚してフル・テュッテイの fff へなだれ込み、TRIOの旋律が高らかに歌われるクライマックスとなる。

ここでカウンターとなる Trombone (+ Saxes) のカッコ良さときたら、洵に胸のすくもので最高である。


打楽器群がグルーヴをリードし、また新たなアクセントを加えつつフィナーレへと疾駆して、鮮やかで爽快なエンディングに到達する- まるでひとときの夢のようだ。


■推奨音源

フレデリック・フェネルcond.

東京佼成ウインドオーケストラ

この曲において何よりまず求められる「快速さ」と「タイトなグルーヴ」を終始確保し、自然でスムーズな歌い方・表現によって聴かせる秀演。

 

 

 

 

 

 

 

実は私が最も愛聴しているのは、飯森 範親cond. 大阪市音楽団 のLive演奏である。

こちらは1992年7月 岡山シンフォニーホールでの大阪市音楽団演奏会のアンコール演奏なのだが、快速なテンポで生命感に満ち溢れ、実に鮮やかにして爽快な秀演である!

( Band Powerにてストリーミング配信されていたものを確保したものだが、この演奏と出遇えたのは実に幸運であった。)


また、この曲の初演である1955年1月7日ナイト・コンサートでの ウイリアム・レヴェリcond. ミシガン大学シンフォニーバンド によるライヴ演奏もYoutubeにて聴くことができる。

この初演演奏では、この曲について後に好まれた快速なものとは異なり、落ち着いたテンポで演奏されているのが印象的である。

個人的には極めて快速であるがきっちりタイトな演奏、そしてトリオの Brasher on Snare Drum がもっと奔放にアピールする演奏をぜひ聴いてみたい!

 

【その他の所有音源】

   エドワード・ピーターセンcond. ワシントン・ウインズ

   斎藤 七雄cond. 陸上自衛隊富士学校音楽隊

   汐澤 安彦cond. フィルハーモニア・ウインドアンサンブル

   辻井 市太郎cond. 大阪市音楽団(Live)

   野中 図洋和cond. 陸上自衛隊中央音楽隊

   シズオ・Z・クワハラcond. 大阪市音楽団 (Live)

   樋口 孝博cond. 陸上自衛隊中央音楽隊 (Live)

   下野 竜也cond. 広島ウインドオーケストラ (Live)

 

-Epilogue-

とにかく、これほどカッコいいマーチはない! この優れたマーチは現在も高い人気があり、その人気が廃れることは今後もないだろう。


しかし「決定版」というべきこの曲の名演録音は未だ出ていない。

録音やWebで接する演奏には、レベル自体は相当高いにもかかわらず、歌い方・アーティキュレーションがどこか “訛って” いたり或いは小細工が鼻につくものが少なくない。またマーチにもかかわらず、打楽器が快速な足取りを阻害してしまっていて残念な演奏もある。


何より音色も発奏もリズムもサウンドも全てがクリアーで、一切の淀みなく快速にグルーヴする演奏が望まれる。そして明るく楽しく、小粋で爽快まさに ”胸のすくような” …それらが全て現出できたら 「僅か3分ほどの行進曲」 にもかかわらずこの曲の魅力が聴く者の心を奪い、音楽の楽しみを極めたひと時をもたらすことは間違いない。

 


<Originally Issued on 2006.6.21. / Overall Revised on 2022.10.21. / Further Revised on 2026.6.17. >

 
 
 

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