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  • hassey-ikka8

レガッタ・フォー・ウインズ

更新日:6 日前

Regatta for Winds  D. シェイファー  David Shaffer  (1953- )


-Introduction-

                                  New York Yacht Club Annual Regatta の模様

急-緩-急の典型的な序曲形式の小品であり、2つの旋律とそのモチーフとで編み上げられたシンプルで明快な楽曲だが、魅力的な旋律と細やかにニュアンスを変化させる展開、現代的で洒落たハーモニーとサウンドに惹きつけられる。

快速部の弾けるような快活さ、Trumpet ソロに始まる甘美な中間部のいずれもがストレートに聴くものへと届き、その心を躍らせる素敵な作品である。


■楽曲概説

✔標題の「レガッタ」とは

「レガッタ」とは原動機のついていないボート (手漕ぎボートやヨット) のレースのこと。

本邦で「レガッタ」というと早慶レガッタなど手漕ぎボートのイメージが強いが、出版された楽譜セットの表紙にはヨットのイラストが描かれていることから、本曲名の「レガッタ」はヨットレースを指すと推定される。


 

アメリカでは1845年に始まった最も歴史ある New York Yacht Club Annual Regatta をはじめとしてヨットレースが盛んに行われている。

例えば海に恵まれたフロリダ州マイアミではコロンブスによる新大陸=アメリカ発見(1942年10月12日)を祝うColumbus Day(10月第2月曜)に「コロンバス・デー・レガッタ (The Columbus Day Regatta)」が1960年以来毎年開催されている。

 

更に 「レガッタ・フォー・ウインズ」が作曲された1993年にはヨットレースのワールドカップである「マイアミ・オリンピッククラス・レガッタ(Miami Olympic Classes Regatta)」も新たにスタートしていて、当時ヨットレース人気が一層高まっていたことを窺わせる。

            The Columbus Day Regatta              Miami Olympic Classes Regatta


✔作曲者

作曲者デヴィッド・シェイファーは、作曲当時オハイオ州のマイアミ大学 (その名はインディアン部族名に由来、フロリダ州にあるマイアミ大学とは別物) にてマーチングバンドの指導者として活動しており、本作を委嘱したのもオハイオ州の高校であった。

オハイオ州はアメリカ内陸部のエリー湖 岸に接しており、こちらでもヨットレースが盛んに開催されているのである。

エリー湖ではオハイオ州のクリーヴランド (Cleveland) やプット・イン・ベイ (Put-in-Bay) で開催されるレガッタが著名であり、シェイファーはそうした身近なヨットレースを見て、曲のインスピレーションを得たのかもしれない。  

※エリー湖 (Lake Erie)

アメリカ五大湖の一つで25,821㎢の面積は世界第11位の淡水湖。日本の四国 (18,298㎢ )よりもずっと大きく、ヨットレースが開催されるというのも納得である。

ただ工業排水による深刻な汚染は永年の問題であり、改善の進んだ現在でも回復の途上という。



エリー湖で開催されるヨットレースとしてはクリーヴランドで開催されるレース・ウィーク (Annual Cleveland Race Week)や、サウスベース島にあるプット・イン・ベイにて開催されるインターレイク・ヨット協会レガッタ (ILYA Sail Regatta) などが挙げられる


■楽曲解説

「活発なテンポの現代的なリズム、そして大胆なコード進行で始まるキラキラと輝かしい作品である。美しい中間部 Andante では Trumpet ソロがフィーチャーされ、伴奏も実に心地良い。これが快速な ”レガッタ” の部分と見事な対照を成している。」


上記出版社による解説 (Barnhouse) にもある通り、生き生きとした快速部はやはりレガッタ (ヨットレース) の様子を表しているものである。

 





Allegro brillante ♩=152 にて第一主題のモチーフが華々しく奏されるオープニング…!

エネルギッシュでスピード感あふれるモチーフ提示を畳みかけ、またダイナミクスと楽器の色とを絶妙に入替えつつ、鮮やかな序奏部を織り上げていく。


そして更に16分音符でクレシェンドする Snare Drum に導かれて全貌を現わしたメロディの浮き立つような爽快感が、一気にこの曲へ聴く者を引込むのだ。


ここではモダンにハーモナイズされた旋律が印象的であり、またカウンターのベースラインもとても小気味良い。

さまざまな打楽器で彩り、ベルトーンも効果的に使って旋律は次々に別の楽器へと移り、リズムと色と表情を変化させながら ”快活さ” を失うことなく進行していく。

まさに大自然の中で水上を滑るように推進し競い合うヨットレースの、情景だけでなく熱気までも感じられるようだ。


高揚した音楽は応答する Clarinet と Alto Sax. のソロによるブリッジを挟み、リリックな Trumpet ソロに始まる Andante moderato ♩=96 の中間部へと入る。


この第二主題がまた実に良い!


Flute がこの旋律を引継ぎ木管のみのアンサンブルとなるところがまた情緒に満ちていて心憎いばかり。


こうして受け継がれ朗々と奏されるメロディが、バックとともに徐々にスケールと抒情を高めていくさまが感動的である。

 


僅かに速まるテンポとともに Horn (+Sax.) のオブリガートが絡んでクライマックスとなった後は、すぅーと収まって Trumpet ソロがもう一度奏でられ中間部を仕舞う。


再び Allegro brllante へ戻ると Temple Block の性格的な音色に続いて Chime が打ち鳴らされ、キラキラとしてスピード感漲る序奏部を形成し第一主題が戻ってくる。すると今度は僅かに憂いを匂わす Flute ソロが現れるのだが、

これが曲中絶妙なアクセントになっていて…何というセンスの良さだろうか。


再現された主部は変拍子を挿入したのちテンポを緩め Maestoso ♩=96 で中間部を回顧した後、小粋な sub. p からクレシェンドして Vivace ♩=162 (162以上) のコーダに突入し、一層エネルギッシュに曲を締めくくる。

 

旋律は2つだけだし本当にシンプルなのだが、気の利いた譜割 (リズム) を含めて旋律がとても魅力的であり、微妙な変化・ニュアンスを織り込んで飽きさせない創意工夫には作曲者の才能が溢れている。まさにオープナー向きの曲で親しみやすいが、とにかくセンスが良い!そう感じさせるのは「天からふってきたひらめき」もさることながら、周到に張り巡らされた作曲者の ”技” とそれを生み出す ”想い” あってのことなのである。

作曲家が世に送り出す楽曲はこうでなくてはいけないし、演奏する側も楽曲を判った気分で安易に ”流す” のではなく、楽曲の魅力を確りと発揮した演奏へ意を尽くしたいものだ。


■推奨音源

エドワード・ピーターセンcond.

ワシントン・ウインズ

この曲の真価を発揮した秀演。出版社デモ音源として作成された録音の常として「如何にもスタヂオ」感は拭えないが、それを跳ね返して余りある

 ”デモ職人” の面目躍如たる高次元な演奏である。

冒頭流れだす快活部のクリアーでスピード感溢れる音色からしてもう素晴らしい。中間部のソロも実に品の良い抒情を存分に聴かせ嘆息させられるし、全曲を通じ目まぐるしく変化するニュアンスも確り表現され、メリハリに富んでいる。


 【その他の所有音源】

  小澤 俊朗cond. 尚美ウインドオーケストラ

 

-Epilogue-

比較的新しい曲であり、瑞々しいその魅力からすればもっともっと演奏されてよいはずの楽曲であるが、録音も少なく演奏機会も思ったより少ないと見受けられる。

難度を抑えつつも素敵な楽曲に仕上がっているので、まずは出版社デモあたりでお聴きいただき、そしてぜひ実際に演奏していただければと思う。この曲にはその価値がある。

 


     <Originally Issued on 2019.4. 7. / Revised on 2022.10.27. / Further Revised on 2023.12.22.>





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