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交響的序曲 J. C. バーンズ

更新日:5月16日

Symphonic Overture James Charles Barnes   (1949- )


-Introduction-

大変ゴージャスな序曲である。

作曲者ジェイムズ・バーンズも ”世界的なレベルの楽団 ”と評するアメリカ空軍ワシントン・バンドの創立50周年を祝うために委嘱された作品であるから、それも当然と云える。


同バンドの委嘱作品といえば「フェスティヴァル・ヴァリエーション」「華麗なる舞曲」( C. T. スミス )「ダンス・ムーヴメント」( P.スパーク )「ハリソンの夢」( P.グレイアム )など高度な技術を要する錚々たるものばかりであり、本作もその例外ではない。


 ※上画像:同バンドの創立50周年記念CDアルバム /「交響的序曲」も収録

  

■楽曲概説

委嘱当時のアメリカ空軍ワシントン・バンドの指揮者ジェイムズ・バンクヘッド中佐 (James M. Bankhead)からの要望は

「ロマン派のスタイルで、規模の大きさと挑戦しがいのある難度を持った、コンサートのオープニングを飾るにふさわしい序曲」

とのことだったが、作曲にあたってはバーンズもかなり悩まされたようだ。

 スコアに記されたバーンズのコメントによれば、1990年1月末には何と一旦完成した作品を破棄し、改めて書き直すことにしたのだという。


どうしても気に入らなかったこの破棄された作品とは異なり、バーンズ自身「交響的序曲」に用いた旋律を大変気に入って、その旋律を着想してからは約2週間で書き上げたというから、ノリにノって作曲したことは間違いないだろう。

  

こうして誕生した「交響的序曲」は (1941年創立の) アメリカ空軍ワシントン・バンドの50周年となる1991年に初演された。完成した本作は、序奏と終結部に金管の華麗で重厚なファンファーレを擁する構成や、快速部冒頭のスピーディでリズミックな Oboe ソロによる主題提示などが、高名なショスタコーヴィチの「祝典序曲」を髣髴とさせる曲想である。

シンコペーションを効かせたリズムやコードで聴かせるソリ、効果的な木管低音楽器の使用などをふんだんに配し、バーンズらしく味付けされながら、終始祝典のムードを充満させた陽気で輝かしい音楽となっている。


■楽曲解説

まず冒頭のファンファーレからして実にゴージャス!

7声の Cornet & Trumpet+ 1声のTromboneという、8声のラッパたちがアンティフォナルに響きあうさまは壮観であり、これに Horn や打楽器が加わって一層豪華なファンファーレとなっていく。

と、次の瞬間2/2拍子 Allegro Vivo に転じ、密やかに始まった Trombone のハーモニアスなシンコペーションのリズムと、木管群の目まぐるしい8分音符が徐々に高揚して開放感に満ちたクライマックスとなり、序奏部を締めくくる。


続く主題提示の Oboe ソロこそは、この曲最大の魅力!

うきうきと高まる気分を表現するリズムを感じさせながらも、どこまでも流麗-

Oboe の美しい音色が抜群に映えている。

 

またここでは、伴奏を務める ”歌う低音” も実に素敵なのだ。

リズミックな伴奏でありながらフレーズ感に満ちていて、これ自体が単独でも確りと愉しげな「歌」になっている!Oboe と低音群とが、さながら Duet となって豊かな音楽を聴かせてくれるのである。


この魅力的な主題を繰返し奏する木管群に、リズミックな金管の楽句が応酬して、音楽はよりスケール豊かなものとなる。スピードを失うことなく一瞬静まったかと思うと、Chime のソロを中心とした打楽器のソリがやってきて…

色彩とコントラストの豊かさも申し分ない。


やがて足取りを緩めると冒頭のファンファーレを Horn ( + Euphonium )が堂々と再現し、豪快なサウンドが轟いてブレイク。ファンファーレの旋律を緩やかに奏するコールアングレ・ソロのブリッジを経て、ロマンティックな中間部へと入る。

 

Adagio の中間部は Saxophone の艶やかな音色に支配されていると云ってよい。

導入部分は Tenor Sax. のソロに始まり、いよいよ Alto Sax. が Harp の伴奏を従えて存分に歌うのだ。


甘美な旋律は木管群によって繰返されるが、今度はこれを彩るオブリガートに回った Alto Sax. ソロが、さらに抒情を極めていく。そして全合奏となって高揚し、感動的なクライマックスを迎えるのだが、幅広く濃厚な音の束が心地よい。


名残惜しくファンタジックに中間部を締めくくると、弾む符点のリズムから再び快速部2/2拍子へ。木管楽器のきらびやかな8分音符との応答が繰返されてブリッジとなり、第一主題とその開放的なムードとが戻ってくる。

 

そして Horn の痛烈な雄叫びと鮮烈な金管のベル・トーンを経て、遂に終結部のファンファーレに突入するが、そこでは吹奏楽の豊潤なサウンドを存分に堪能することができよう。

 

まるで弦楽器の響きを想起させるような木管群のトリルが音楽を一層盛り上げると、一気呵成のコーダへと突入する。


激しいリズムに続いて、鮮烈な全合奏のコードが雄として鳴り響き、華やかな終幕となる。


■推奨音源

ジェイムズ・バーンズcond.

東京佼成ウインドオーケストラ

この曲の有する美点を充分に発揮した、スケールの大きな好演。

この作曲者バーンズによる自作自演は、出版社 Keiser Southern Music のデモ音源にも採用されている。

 

 

 

 

 

 

【その他の所有音源】

 鈴木 孝佳cond. TADウインドシンフォニー(Live)

 アラン・L・ボナーcond. アメリカ空軍ワシントンバンド

 アレキサンダー・ヴェイトcond. スイス・シンフォニック・ウインズ

 松元 宏康cond. ブリッツ・ブラス

 ジェイムズ・バーンズcond. 洗足学園音楽大学シンフォニック・ウインドオーケストラ(Live)

 ジェイムズ・バーンズcond. オランダ王立陸軍軍楽隊

 加藤 良幸cond. 陸上自衛隊北部方面音楽隊 

 

-Epilogue-

「書き直したこの曲が、前の曲より良いことは確かだから、ぜひ楽しんでほしい。」

とバーンズのコメントは控えめだが、この「交響的序曲」の快活な爽快さは突き抜けており、非常にチャーミングな音楽だと思う。私は理屈抜きに大好きである。

特に練習番号4A=Oboe ソロのあの素敵さ…

あそこが好きにならない人なんていないであろう。

 


      <Originally Issued on 2010.3.21. / Revised on 2022.11.7. / Further Revised on 2024.1.6.>

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