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序奏とアレグロ 酒井 格

更新日:5 日前

Introduction and Allegro          酒井 格 Itaru Sakai   (1970- )

-Introduction- 当時高校生であった作曲者・酒井 格が、何とあの「たなばた」以前に作曲した金管五重奏曲(編成:Trumpet×2, Horn, Trombone, Tuba ) である。1986年の作曲後、初演までに永く時間を要し2000年夏に漸く実演されたという経緯を持つ。

極めて難曲との評判が聞こえていたし、「序奏とアレグロ」という標題から変拍子を駆使した現代曲をイメージ(私世代の吹奏楽人固有の ”刷り込み” だが…^^;)して、酒井 格もそんな曲を書いていたのか-などと勝手に想像を膨らませていたのだが- 

いざ聴いてみたら、これも酒井ワールド全開のハッピーな楽曲だった!


■上野の森ブラスアンサンブルへのオマージュ

✔作曲者コメント

この「序奏とアレグロ」は、あるブラスアンサンブルへのオマージュを込めて創られている。

「この作品は1986年のある日、NHK-FMで放送された、「上野の森ブラスアンサンブル」の素晴らしい演奏に感銘を受け書いたものです。その時に放送されていた織田英子さんの作品「金管五重奏曲」 は今まで私が知らなかった金管楽器の可能性を駆使した作品。同じく織田英子さんの編曲した「聖者の行進」のとても気の利いた楽しいアレンジなど、数多くの影響を受けています。その他、作曲当時親しんでいた吹奏楽作品の影響も感じられるでしょう。」

                                  -スコア所載の作曲者/酒井 格のコメント


✔上野の森ブラスアンサンブル (上野の森ブラス)

上野の森ブラス(旧称:上野の森ブラスアンサンブル/略称:モリキン)は1973年に当時東京芸術大学在学中のメンバーにより結成、現在のメンバーも1979年からという、現存する ”日本最古のブラスアンサンブル”(上野の森ブラスHP=現在は閉鎖 より)である。

Trumpet 曾我部清典 織田準一、Horn 澤敦、Trombone 花坂義孝、Tuba 杉山淳 というメンバーの皆さんは、常任指揮者をお願いした花坂師匠をはじめ、私が学生時代に所属した大学バンドの指導陣として丸ごとお世話になった先生方である。

その縁で親しくさせていただき、当時 (もしかして今も?) 上野の森ブラスのコンサートの聴衆は我が大学バンドのメンバーが一大勢力なのであった。(^^)華麗なテクニックと優れた音色は当然として、音楽性溢れる表現と絶妙に息の合ったアンサンブル、音楽の楽しさを自由自在に表すそのステージは「さすが」の一言に尽きる。

さらに織田英子の書下ろしオリジナルアレンジによる、個性的で魅力に満ちたレパートリーもこのアンサンブルの強力な武器である。

ルネサンス期の古楽に始まるクラシック音楽はもちろん、世界各地の民謡、本格的なジャズやポピュラーソングに至るまで扱うジャンルは実に幅広く、それぞれの愉しさを尽くす-これこそが「上野の森ブラス」の奏でる音楽の真骨頂だろう。


いち早くジブリ映画音楽もレパートリーに取入れていたし、コンサートでは衝撃極まるTubaの超絶ベースラインによる本格的ジャズの「チュニジアの夜」 も忘れられない。かと思うと、プログラムに載っていない 「矢切の渡し」ではオーバーアクション&存分に ”こぶし” を回したりの大サービスも…!(^^)

  

「中世のマドリガルとキャロル」「12の英雄的行進曲 (テレマン)」「中南米のフォルクローレ」「日本民謡組曲」「イエスタデイ (ビートルズ) 」 -斬新なアレンジによる楽曲のレパートリーと心躍る演奏は今も私の記憶にありありと甦る。聴衆を楽しませる想いが充満したそのパフォーマンスは、いつだって音楽の喜びへ存分に浸らせてくれるのだ。


そして、最大の特長はコンサートにて全曲を「暗譜立奏」すること!


1996年にはレパートリー101曲を全て暗譜で演奏するという前代未聞の”オールリクエストコンサート”を敢行、当然私も拝聴に参上したが、大いに盛り上がった!

プログラムには101の曲目リストが掲載されており、客席にゴムボールを投げ込んで受け取った人にリストから任意で曲を選んでもらい、直ちに演奏・進行するのである。それを実際全て暗譜で演奏してしまうのも見事だし、構成自体が出たとこ勝負というあり得ないコンサートを滞りなく、この上なく楽しく進行させてしまうTuba杉山氏のMCも凄かった!

たった5人のアンサンブルなのに、あの東京文化会館 (@上野) 大ホールに響きを満たし何の違和感も生じさせぬ「上野の森ブラス」の演奏には、まさに感嘆するばかりなのであった。


✔「序奏とアレグロ」を生み出したもの

そんな「上野の森ブラス」の演奏を耳にした、当時まだ高校生の酒井 格はこんな感銘を抱いたとか。

「Trumpet や Trombone の High Tone はもちろんのこと、Horn に音程が存在する!そして何よりも驚いたのは Tuba の機動性です。普段はマーチのベースを刻むくらい。たまにTrombone とユニゾンでのメロディー、そして「恋のカーニバル(岩井直溥編)」に至っては、あれが Tuba の限界と認識していたのですが、この時に演奏されていた織田英子作曲「金管五重奏曲」 を聴いて、その Tuba の圧倒的なパフォーマンスには度肝を抜かれてしまったのです。」                           -作曲者/酒井 格HPより

                  織田英子作曲「金管五重奏曲」収録CD、ならびに「その頃」の上野の森ブラス


このように「上野の森ブラス」を意識しつつ、作曲者がそれまでの金管楽器の認識を振り払うように、或いは何かに挑戦するように書いたというのがこの「序奏とアレグロ」だ。

14年が経過し(一部和声を直したものの)原型のままに初演を迎えたわけだが、結果としてプロの初演奏者も認める難曲となったと同時に、「金管楽器の暖かいサウンドと可能性を追求した、素晴らしい曲です。」(NHK交響楽団首席 Trombone 奏者 新田幹男氏)とのコメントを得たとのことである。


■楽曲解説

標題通り Moderato の序奏部に続いて、アンカーと展開部が交互に織上げられる Allegro の主部となり、Piu mosso のコーダで締めくくられるという明快な構成の、陽気な音楽である。輝きを放つ魅力的な旋律やパッセージが随所にちりばめられているのは、まさに酒井 格ならではと云って良いだろう。

序奏部は明らかにアルフレッド・リードの名作「アルメニアン・ダンスPartI」の影響を受けているが、現れる旋律は民俗的ではなくモダンでリリカル、そして若々しい印象を与える音楽となっている。(冒頭、32分音符に始まるファンファーレとその反復はまさに「アルメニアン・ダンスPartI」の冒頭を彷彿とさせるもの。)


やがて優しく感傷的な旋律が Trombone に現れ、

そのムードが Horn-Trumpet へと移りゆく。

冒頭部を Tuba が再現するころには大変ファンタジックな響きが聴くものを包み込むのであり、ぜひ繊細な弱奏が聴きたいところである


やがて静まった音楽が、突如ポーンと弾けるように Allegro に入ると、一転して快活で陽気、そして洒脱を極めた楽想となる。


ここからは Tuba による実に機動的なベースラインが現れ、その縦横無尽に”飛び回る”さまが聴きものである。


前述の通り、この Allegro では最初に現れるリズミックな旋律がアンカーとなり、

それと交互に展開部が織り込まれて曲が進んでいくのである。

 

その展開部では Trombone がそのキャラクターや特性を活かして、まさに大活躍だ!


アンカー旋律が戻り一旦落着いた後、放射状に高揚して Piu mosso に突入すると

音楽は足取りを早め活気をさらに増しつつ、爽快でハッピーな聴後感に包まれる終結へと一心に向かってゆく。


■推奨音源

ブラスアンサンブル・ブロウ(brass ensemble BLOW)

この曲の特性、愉しさを伝えてくれる好演であり、移り変わる曲想のニュアンスも適切に表現されているのが大変好もしい。




-Epilogue-

さあ、あとはそのオマージュから発したこの作品が、本家「上野の森ブラス」で演奏されるのを待ち望むだけ。

当たり前だがこの「序奏とアレグロ」という音楽は ”暗譜立奏” で演じられる「上野の森ブラス」の世界そのものなのだから!!! (...古希を迎えられた先生方、如何でしょうか?)

 

先生方に実演を期待しつつ、私は自分でも「序奏とアレグロ」を演奏してみたいと切望している。この曲は Trombone を旋律担当にセッティングしてあり、実にやりがいのある楽しい譜面だし、心を入れ替え(?) Trombone の練習に励み直してはや10年あまり、漸くこの曲を演奏可能になったという手応えを得ているので…。

演奏するなら、当然 ”暗譜立奏” やるしかない!\(^o^)/



<Originally Issued on 2018.5.4. / Revised on 2022.5.22. / Further Rivised on 2023.11.25.>


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