[音源堂コラム⑧] 深謝追憶 -秋山 和慶先生
- hassey-ikka8
- 22 分前
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-Introduction-

2025年1月26日に惜しまれつつ逝去された真の名匠・秋山 和慶先生ー。 その秋山先生が遺された吹奏楽のLive録音が、今次々とCD化され世に出て来ている。

2026年2~4月にリリースされたものだけでも4枚。オオサカシオン・ウインド・オーケストラと広島ウインド・オーケストラを指揮したもので、吹奏楽オリジナルの名曲が決して格式張ることなく選曲されている。 「プラハのための音楽1968」 (K. フサ) などから成る現代作曲家による名曲集※もあるが、「春の猟犬」「ハムレットへの音楽」他のA. リード作品集もあり、また「ザ・シンフォニアンズ」「交響組曲」(C. ウイリアムズ)や「序曲”祝典”」「交響曲第3番」(F. エリクソン)といったスクールバンドに愛された、ごく”大衆的な”アメリカの吹奏楽オリジナル曲集もある。これらが秋山先生の指揮により演奏され録音が提供されたのは、洵に得難いことである。
演奏は如何にも吹奏楽らしい派手なコントラスト(私は嫌いじゃないが)で圧倒するというより、とにかく丁寧な演奏表現が心に残る。どの曲も神経が行き届き”大事に”演奏され、実に端整な印象である。
管弦楽においても一流の成果を遺した秋山先生は、「吹奏楽」 も分け隔てなく振って下さったが、思い描かれるあるべき音楽の姿は当然そこでも徹底されていたということであろう。
※尚、このCDアルバムにはP.クレストン作曲「祝典序曲 op.116」(1980年)も収録されている。クレストン作品の中でも
有名な「祝典序曲 op.61」(1955年)とは全く別の曲であり、大変希少な録音である。
■世界的に認められた名指揮者、齋藤メソッドの体現者のひとり

秋山 和慶は、小澤 征爾・山本 直純と同じく桐朋学園大学にて齋藤 秀雄に指揮法を学び、1964年に指揮者デビューしている。
その活躍は日本国内のみにとどまらず海外のトップオケを多数客演、1972~1985年にはバンクーバー交響楽団音楽監督を務めた、文字通り世界的に活躍した名指揮者なのである。
一方で世界的に認められた指揮者の中では吹奏楽にも非常に理解が深かった貴重な存在で、吹奏楽というジャンルにおいても多くの名演・名録音を遺した。 (全日本吹奏楽コンクールの課題曲参考演奏の録音までも幾つも担当している。) その演奏はどれも、楽曲の魅力を実に的確に把握し、美的を極めつつメリハリのある立体的な音楽を聴かせてくれるものだった。


そして指揮法においては、齋藤 秀雄の著した「齋藤メソッド」の体現者にして齋藤の後継者であった。美しく整った無駄のない、動きに統一感があって極めて明快なその指揮は、実際に見ればその素晴らしさが直ぐに判るだろう。
齋藤秀雄 著 「指揮法教程」に準拠し、指揮法の基本を映像も含めて指導する「齋藤秀雄メソッドによる指揮法」では全編に出演し、驚くべきことに何と打点を説明するため太鼓を叩く様子から、加速・減速を交互に切れ目なく真円の運動を描くさまなど、初歩の初歩の(しかし枢要な)指揮指導を、秋山先生自らが ”やって見せて”くれている。
難解な「指揮法教程」での齋藤用語だが、それもそれぞれ映像で実際の動きを見せてもらえるので、これにより理解は格段に早く進むであろう。
アマチュアだろうが、常任指揮者不在の練習の時だけであろうが、団員の前に立って棒を振るというならば、この教材(現在はDVD)を視て勉強することくらいは絶対的に必須なのである。

■指揮者「秋山和慶」との出会い
私が吹奏楽とTromboneに、いや音楽そのものを知り取り組むこととなったのは1977年中学入学の年からだ。あっという間に吹奏楽/音楽に夢中になり、のめり込んでしまった私だが、そんな私の前に極めて画期的な吹奏楽LP (当時は配信どころかCDもない)のシリーズが現れた。-それこそが、佼成出版社が所謂”インディーズ版”として発売開始した、計8枚の 「秋山和慶=東京佼成ウインドオーケストラ」 シリーズであった。

Vol.1 のR. E. ジェイガー「シンフォニア・ノビリッシマ」「交響曲第2番”三法印”」からしてその演奏の次元の高さと音楽的魅力とに圧倒された。同時収録の藤田 玄播「天使ミカエルの嘆き」も屈指の名演である。
Vol.2 以降も名曲名演の連続。A. リード「第1組曲」「パッサカリア」「ロータス・スートラ」や「古祀」「飛鳥」をはじめとする邦人作品の傑作、「ガイーヌ」「道化師」などのアレンジ作品や、大作曲家による吹奏楽オリジナル作品が収録されたこのシリーズの選曲ならびに演奏はとにかく光っていて、従来の吹奏楽レコードとは一線を画すものになったと思う。
それも秋山和慶という指揮者の優れた手腕の賜物であっただろう。
この秋山シリーズは大半がCD化もされたので現在でも聴くことができるが、もちろん必聴である。このシリーズで 「秋山 和慶」 を識った私はすっかりファンになり、その活躍と演奏を注目し続けていくことになったのである。
■晩年の得難い吹奏楽への貢献 ご年齢とともに国内の活動に軸足を戻されてからは、再び「吹奏楽」との接点も増やされ、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラや東京佼成ウインドオーケストラを中心に吹奏楽の演奏会でも数多く指揮台に立った。
演奏曲目も管弦楽曲からのトラスクリプション作品や大作曲家の吹奏楽オリジナル曲に閉じることなく、前述のようにスクールバンドにも人気の作品まで実に幅広く手掛け、「ルイ・ブルジョアの讃美歌による変奏曲」 (C. T. スミス)や「オリエント急行」(P. スパーク)といった楽曲の名演も録音に遺っている。 また洗足学園大学での後進指導にもあたり、指揮指導にとどまらず同学では管弦楽や吹奏楽の指揮も行っていた。2014年の洗足学園大学イベント”吹奏楽の祭典”では、同学教授・講師陣により編成された名手揃いの Senzoku Special Wind World を指揮し、”さすが”の好演を遺している。 中でも「吹奏楽のための木挽歌」(小山 清茂) は動画画面に現れる名手先生方の各ソロも素晴らしく、まさしく一聴の価値あり。

このように数々の素敵な演奏で我々を感動させて下さり、また私のような(ど)アマチュア指揮者をも手ほどきする非常に有用で効果的な指揮法教材を提供下さり、秋山先生には心からの感謝の念しかない。何よりもっともっとあの魅力的な演奏を聴かせていただきたかったと、無念を禁じ得ないのである。 秋山先生、本当にありがとうございました。どうか高き天より、これからも世界が平和に幸せな音楽で満たされたものになりますよう、お見守り下さいませ。 -Epilogue-

秋山先生が指揮された貴重な吹奏楽演奏会の録音は、まだまだたくさんあるのではないかと思う。全てが演奏・録音とも揃って良好とも限らないし、諸々の制約もあるだろう。しかし、ぜひ可能な限り多く世に出してほしいと心から願う。
具体的な例を一つ挙げると、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ 第133回定演の音源、R. E. ジェイガー 「交響曲第1番」を発売してもらえないだろうか…とずっと期待している。
この願いも叶えてもらえたら、最高にうれしい。
<Issued on 2026.4.11.>

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